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和歌山地方裁判所 昭和42年(タ)6号 判決 1967年8月25日

本籍 韓国慶尚南道 住所 和歌山市

原告 町村はるの(仮名)

被告 和歌山地方検察庁検事正 下牧武

主文

一、原告と本籍、韓国釜山市○○○区○○里(旧慶尚南道東莱郡○○面○○里)一、〇五一番地、亡鄭英達とが昭和二七年三月一一日和歌山市長に対する届出によりなした婚姻は、これを取消す。

二、訴訟費用は国庫の負担とする。

事実

原告は、主文同旨の判決を求め、その請求の原因として、次のとおり述べた。

原告は、昭和二〇年一〇月ごろ当時和歌山市内に居住していた前記鄭英達(朝鮮人)と内縁関係を結び、爾来事実上の夫婦として同棲し同人との間に二人の子を儲け、昭和二七年三月一一日居住地の和歌山市長に対し婚姻の届出をした。ところがその後、昭和三八年八月ごろになつて原告は夫英達が既に昭和一八年六月一二日に鄭仁順と婚姻している事実を知つたので、鄭英達に対し、原告との間の婚姻取消の手続をなすよう要求しているうちに同人は昭和四一年三月五日死亡した。

右に述べたとおり原告と鄭英達との婚姻は重婚であるから、その取消を求める(因に原告のもとの本籍三重県北牟婁郡△△町大字○○○四五五番地の一の戸籍簿には前記鄭英達との婚姻届出の旨登載されているが、鄭英達の本籍の戸籍簿には原告との婚姻の事実は記載がない)。

被告は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、原告主張の婚姻の事実はいずれもこれを認めるが、その余の事実は不知と述べた。

立証として、原告は甲第一ないし第四号証を提出し、証人夏目昇造こと孫昇桔の証言、および原告本人尋問の結果を援用し、被告は、甲号各証の成立はすべて認めると述べた。

理由

いずれもその方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから、真正な公文書と推定すべき甲第一ないし第四号証、証人孫昇桔の証言および原告本人尋問の結果を総合すると、原告主張の全事実を認めることができ、反証はない。

そうすると、原告と鄭英達との婚姻は重婚であることが明らかであるから、法例第一三条第一項本文、韓国民法第八一〇条、第八一六条第一号、同附則第一八条および日本民法第七三二条、第七四四条の規定に準拠し、取消の請求ができるものである。

よつて原告の本訴請求は理由があるので認容し、訴訟費用について民事訴訟法第八九条、人事訴訟手続法第一七条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡垣久晃 裁判官 林繁 裁判官 清水元子)

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